悟空:LLPの仕事って全員が何か分担しなきゃなんないの?
仙人:そうじゃ、それが権利でもあり義務でもあるのじゃ。全員が仕事に参加することで事業が健全に進んでいくことが期待されておる。
悟空:金をたくさん出した人が権限が強いってわけじゃない、ってのはわかったけど、具体的にどうやって分担するの?
仙人:まず、重要事項は全員一致で決定する、仕事には全員参加、この2つは強制じゃ。それさえ守ればあとは話し合いで決めて契約書に書くのもよし、別に規則を定めてもよし。
悟空:LLPって株式会社に変更できるの?
仙人:Pとは何じゃった? 組合じゃろ? 法人格は持っておらんな。ということは株式会社にはなれんということじゃ。
悟空:なるには?
仙人:いったん組合を解散して、改めて株式会社を設立するしかないのう。
悟空:解散するときゃどうすんの?
仙人:清算人を置いて法務局へ解散の登記をすればよいな。
悟空:LLPってのは法人格は持ってないんだよね。契約はどうすんの?
仙人:うむ、組合員はそれぞれ肩書を持っておるはずじゃな。代表とか財務担当とか。そういった肩書を持った組合員としての個人名で契約を結ぶのじゃ。というて、その個人にすべての権利・義務があるわけではない。肩書つき組合員が結んだ契約はLLPそのものが結んだのと同じとみなされるんじゃ。名義が個人名というだけの話じゃよ。
悟空:じゃ、従業員も雇えるんだね。そのときの社会保険は?
仙人:もちろん従業員は雇えるわい。当然、労災・失業・健康といった各種保険や厚生年金にも入れる。
悟空:銀行口座は?
仙人:これまた同じく肩書つき個人名で開設できる。名義は個人名じゃが、LLPそのものが口座を持っておるのと同じというのも今までの説明どおりじゃ。
悟空:じゃ、許認可もLLPとして取れるんだね。
仙人:おっと、ここだけは違うんじゃ。今までの説明では、個人名で何かしたらそれがLLPそのものがしたこととみなされるんじゃったが、許認可だけは違う。許認可だけはLLPとは関係のない個人として取らねばならん。その上で、許認可を受けた個人が集まってLLPを運営することになるな。
悟空:補助金とか融資はどうなんの?
仙人:う~む、それは補助金や融資の内容によるのう。要件に合えばLLP自体で受けられるはずじゃ。
悟空:じゃさ、師匠とおいらでLLP作ろうよ。
仙人:何をするんじゃ?
悟空:本書いたりさ。『漫画 これであなたも仙人になれる』とか。
仙人:たわけたことをぬかしておらんと、壺中天の術でも練習せい!
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植田 研史 |
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悟空:組合員になるには条件があるの? なんか儀式があるとか…
仙人:おどろおどろしいことを言うでない。仙人になるための修行は厳しいが、LLPの組合員には誰でもなれるわい。ただし法人が組合員になるには、実際の業務をこなすために自然人(生身の人間)が指名されておらんといかんがの。
悟空:外国人とか海外に住んでる日本人でも?
仙人:かまわんぞよ。ただし全員が海外におるというのはいかん。最低1人は日本におらんとな。
悟空:LLPを始めるまでの手順は?
仙人:組合員どうしがLLP契約を結ぶ。このLLP契約というのが、株式会社でいうところの定款にあたるんじゃ。というても定款ではないからの、公証役場で認証を受けたりはせんでもよいのじゃ。
出資金を払い込む。その方法も簡単でな、株式会社の設立と同じやり方でよい。通帳のコピーじゃな。
登記申請。問題がなければ登記完了。たった3段階じゃ。
悟空:費用はいくらかかんの? おいらが師匠に弟子入りしたときにゃ、酒と熊の掌と、エロ本と…
仙人:これこれ、余計なことは言わんでもよい。費用は登記料の6万円だけじゃ。書類の作成を専門家に頼んだときの報酬は別じゃぞ。
悟空:LLP契約書ってどんなこと書くの?
仙人:会社の定款と同じ性質のものじゃとは言うたな。じゃから運営の基盤となるべき事項を定めればよいのじゃが、必ず書かにゃならんことは法律で決まっておる。
1. 事業目的
2. 名称
3. 事務所の所在地
4. 組合員の住所・氏名
5. 契約の効力が発生する年月日
6. 存続期間
7. 組合員の出資の目的とその価額
8. 事業年度
悟空:6がわかんないなぁ。事業を始めるんだから、ずっと続いて欲しいんじゃないの? なんで期限を切るんだろう?
仙人:そりゃ仕方がないわい。契約書なんじゃから必ず始めと終わりがいるわい。
悟空:出資金て最低いくら?
仙人:1円以上であればいくらでもよいのじゃ。でもって、契約を結ぶには自分と相手と最低2人の人間がいるな。じゃによって、LLPとしての最低出資金は2円ということになる。
悟空:現物出資はいいの?
仙人:かまわんぞよ。貸借対照表に載せられるものであればな。言うておくが、鍋だの鉛筆だのではだめじゃぞ。少なくともパソコン程度の価値はないといかん。
悟空:映画のためのLLPなんかで、労働力、つまり俳優として出演するっていう形での出資はどうなんだろ?
仙人:そういうのを労務出資というんじゃが、原則としてこれは認めておらん。
じゃが待て。LLPの利益配分はみんなの話し合いで決めてもよかったんじゃな? ということは、まず1円で参加する。俳優として出る。ギャラは利益配分としてもらう、ということもできるわけじゃ。
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植田 研史 |
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悟空:LLPって何の略?
仙人:Limited Liability Partnershipじゃ。日本語では「有限責任事業組合」というな。
悟空:どんな特徴があるの?
仙人:組合員全員が有限責任であること。有限責任とは出資者が自分が出資した分までしか責任を負わない、ということじゃな。つまり万一事業が失敗した時でも、自分が出した出資金さえ諦めればそれで終わり。あといくら会社が借金を背負っておろうが関係ないんじゃよ。
内部ルールが柔軟であること。株式会社では取締役の人数から株主総会の開催方法、利益の配分までやり方が法律でガチガチに固められておるな。じゃが、LLPの場合、組織のルールを決めるのに組合員(=出資者、株式会社でいうところの株主)が合意すればそれでええのじゃ。
構成員課税であること。株式会社では、まず法人税を取られてしかるのち出資者として配分を受けた利益(株の配当)にも所得税がかかるな。LLPでは組織に税金はかからん。
取られるのは個人の所得税だけじゃ。しかも損益通算ができる。
悟空:損益通算て?
仙人:これはじゃな、猿回しというおぬしの本業があるな。その収入と合算した上で税金の額を決めてくれるんじゃ。
悟空:それならLLPの方がいいじゃん! これで行こ!
仙人:こりゃ待て、話は最後まで聞け。税金面ではええかもしれんが、LLPでは給料はないんじゃぞ。もらえるのは配当だけじゃ。組合なんじゃからな。
悟空:なんだ…もうちょっと聞こう。どういうことに向いてるの?
仙人:共同事業じゃな。個人なり法人なりがノウハウを持ち寄ってなにか新しいことをやろうというのに向いておる。
たとえば映画じゃ。「もののけ姫」は観たな? あの映画は民法組合で作られておる。
民法組合というのはLLPとほぼ同じものじゃが、ただ無限責任なんじゃ。つまり万一この作品が当たらんで何億もの借金ができてしもうたら、出資した各社はその借金を全部払い終わるまでは責任を逃れられんのじゃ。これじゃあ具合が悪いというので、その民法組合の特例としてできたのが、有限責任でもええLLPなんじゃ。
他にも大学教授とメーカーが組んで新製品を開発するとかじゃな。
メーカーは設備や研究資金、つまり金を出す。教授は研究に専念し、開発を指導・監督する、つまり能力を出す。それでいて両者が何%ずつ出資したかには関係なく利益は折半、なんちゅうことができるからのう。
悟空:それができるのは内部ルールが柔軟、つまり話し合いでルールを決めてもいいからだね。
仙人:ふむ、少しはわかってきたようじゃの。褒めてつかわす。
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植田 研史 |
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