≪質問≫
飲食店の開業にあたり、準備から開店までのプロセスを教えてください。
≪回答≫
飲食店を開きたいという夢、おおいに結構です。
決してその夢に水をさすつもりはありませんが、飲食店というのは街のあちこちにある
だけに誰にでもできるような印象があります。しかしこれとてもビジネスであることに
変わりはありません。飲食業が好きであること、人に接することが好きであることはも
ちろん大前提ですが、好きなだけでは続かないのもまた現実です。そのへん覚悟はよろ
しいですね?
さて気を引き締めたところで本題に参りましょう。
まず事業計画書はできていますか?
飲食店といっても多種多様ですが、
「私はこんな店をやりたい」
という自分のイメージを文書化したのが事業計画書です。
事業はやってみなけりゃわからんよ、というのは間違いですし、個人事業なんだから事
業計画書なんていらんよ、というのも間違いです。事業計画書なしで始めるなんて、海
図なしで船を出すようなものです。客単価数百円の立ち食いソバ屋なのか、食前酒に始
まるフルコースを提供して数万円をいただくディナーレストランなのか、それによって
立地や建築業者への発注内容、従業員の教育訓練から食器にいたるまですべてが違って
きます。
自分の理想の形を人に語れること。これが基本(=事業計画)です。だいいち事業計画
もできていない人には誰も開業資金など貸してはくれないでしょう。ちなみに札幌での
飲食店の平均開業費用は3600万円です。少なくともこれの3分の1は自己資金で用
意しておきたいですね。
次に、オーナーたるもの少なくとも調理かフロアサービスのどちらかには精通している
ことが必要です。両方できればそれに越したことはありません。目玉焼きひとつ作れな
い、接客のイロハも知らないでは、部下はついてこないでしょう。経験がないのなら、
まずはどこかの飲食店で修業されることをおすすめします。
次に、あなたは調理師・栄養士・製菓衛生師の資格のうちどれかを持っていますか?
飲食店ですから調理師免許を持った人が必ずいなければならない、と思いきや実はこれ
は必須ではありません。
その代わり、食品衛生責任者は必ず置かなければなりません。一般には厨房の長がなる
ものです。このとき、上記の資格のうちのどれかを持っていれば自動的にくっついてき
ますが、どれも持っていなければ、食品衛生協会が開く講習会に出席して修了証をもら
わねばなりません。出席して半日机に向かっていれば、試験もなく誰でももらえます。
はい次。これも忘れちゃいけない「飲食店営業許可」
厨房の機器の配置と寸法を記した店内見取図と食品衛生責任者設置届を添えた申請書を
保健所へ出してから何もなければ約1週間で許可が下ります。
図面なんぞ面倒じゃ〜、というのなら行政書士が数万円の報酬でやってくれます。間際
になってあわてないようにあらかじめ計画に入れておきましょう。
あ、店の造作にかかる前の図面の段階で一度、保健所と消防署に相談に行った方がいい
ですね。もし店が完成してから不具合を指摘されたら余計な改装費がかかってしまうか
らです。
さて、店はできました。人も物もそろいました。個人事業ならあとは税務署に届けを出
すだけですが、会社組織にするのならもちろんこの時点で法人登記が完了していなけれ
ばなりません。さらに、
人を雇う ⇒ 年金事務所(個人事業…雇用保険・労災保険、法人はさらに健康保険・
厚生年金保険)
就業規則 ⇒ 労働基準監督署
深夜営業 ⇒ 管轄警察署の生活安全課
と、山のように提出する書類があります。
そうして開店したところで、ただ待っていたのでは近所の人しかあなたの店のことを知
りません。広告宣伝が必要ですね。チラシを撒くのもよし、プレスリリースという高等
戦術もあります。マーケティングを勉強しましょう。
店を開くのは誰にでもできます。開いてからが勝負です。店は繁盛してナンボのもので
す。参加することに意義があるのではありません。一難去ってまた一難、というのが経
営者の宿命です。ご健闘をお祈りします。
≪お客様の声≫
こちらの環境や条件は何もお伝えしていなかったにもかかわらず、ていねいな回答をあ
りがとうございました。
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